本物の梅干とは

 昨今の若い人は、酸味も辛味も、苦味も苦手という人が増えていると聞きます。味覚は子どものころの食生活によって決まりますから、画一化された加工食品を食べて育った人は、当然、味覚の幅が狭くなります。酸味が苦手な若者が多いことの原因には、日本人の食生活からすっぱい本物の梅干が消えつつあることも大きく影響していると私は考えています。
 現在、流通している梅干の大半は「調味梅干」であって、本物の梅干ではありません。調味梅干というのは、梅干を水に浸したあと、調味液に漬け込んでつくられています。そのさいに、梅のすっぱさのもとである有機酸が失われ、変わって調味液の人工的な味をしみ込ませたのが調味梅干です。
 梅干がすぐれた食べ物である最大の理由は、クエン酸をはじめとする有機酸が豊富だからです。有機酸は殺菌効果にすぐれ、食中毒や食べ物の腐敗を防止します。クエン酸はエネルギー代謝を活発にして疲労を回復させます。昔の人は、昼ご飯の弁当には必ず梅干を入れて、弁当の腐敗を防ぎ、午前中の労働による疲労を回復させました。有機酸の酸味は唾液の分泌を盛んにして消化を促進しますから、午後からの労働の活力を生み出すためにも、梅干入りの弁当は、まことに理にかなったものでした。
 梅干はすっぱいから梅干なのであって、すっぱくなければ梅干とはいえません。どうぞ梅肉エキスや梅干で、本物のすっぱさとはどういうものか、次の世代に伝えていただきたいと思います。(2010年7月13日)