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に含まれる成分とその作用

栄養成分基礎データ

表:梅の未熟果(青梅)の可食部100gあたりの栄養成分
エネルギー 水 分 タンパク質 脂 質 炭水化物 灰 分 食物繊維
28kcal 90.4g 0.7g 0.5g 7.9g 0.5g 2.5g
エネルギー 28kcal
水 分 90.4g
タンパク質 0.7g
脂 質 0.5g
炭水化物 7.9g
灰 分 0.5g
食物繊維 2.5g
ミネラル類
ナトリウム 2mg
カリウム 240mg
カルシウム 12mg
マグネシウム 8mg
リ ン 14mg
0.6mg
亜 鉛 0.1mg
0.05mg
マンガン 0.07mg
ビタミン類
ビタミンA 20μg
ビタミンE 3.3mg
ビタミンB1 0.03mg
ビタミンB2 0.05mg
ナイアシン 0.4mg
ビタミンB6 0.06mg
葉 酸 8μg
パントテン酸 0.35mg
ビオチン 0.5μg
ビタミンC 6mg

※日本人の食事摂取基準(2015年版)に基づき、ビタミンAはレチノール活性当量、ビタミンEはα-トコフェロール量をそれぞれ指標とした。

梅は、果物の中では比較的カリウムや鉄、ビタミンEを豊富に含み、それぞれリンゴの2倍、6倍、33倍含まれています。
カリウムはナトリウムと共に、細胞の浸透圧の維持調整を行うミネラルです。カリウムには余分な塩分(ナトリウム)を排泄させる作用があることから、血圧を下げる代表的な栄養素と言われています。
鉄は、その多くが赤血球のヘモグロビンに利用され、酸素の運搬役を担います。そのため、鉄が不足すると、貧血を起こしやすくなります。
ビタミンEは、脂溶性ビタミンのひとつで、高い抗酸化力を持つことが知られています。

図

※みかん=温州みかん 砂じょう 普通
※りんご=皮むき
出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

梅の特徴的成分

有機酸類

梅のすっぱい味はこの有機酸によるものです。有機酸は、梅果実中に4~6%(1)、梅干しに3~4%(2)(ただし、調味梅干しでは脱塩工程により概ね半減します(7))、梅肉エキスに40~50%(3)程度含まれています。
梅の主な有機酸はクエン酸であり、次いでリンゴ酸、シュウ酸が多く、少量の酒石酸、乳酸、酢酸、コハク酸も含んでいます(4)。まだ熟していない青梅にはリンゴ酸が多いですが、熟していくに従ってクエン酸が大部分を占めるようになります(1)。
クエン酸は、クエン酸回路の構成成分として、エネルギー源として用いられます。そのためクエン酸には、疲労抑制効果があると言われています。また、キレート作用を持つため、カルシウムや鉄などのミネラルの吸収を助けることが知られています。

ポリフェノール

植物が生み出す二次代謝物の一部で、分子内に複数のフェノール性ヒドロキシ基を持つ植物成分の総称です。代表的な作用として、高い抗酸化力が知られています。一口にポリフェノールと言っても化学構造の違いは様々で、人への健康効果も様々です。梅由来のポリフェノールを用いた研究では、動物や試験管レベルの実験ではありますが、抗酸化、降血圧、消化管機能改善、抗炎症、脂質代謝改善、抗疲労、抗ウイルス、食後血糖値低下、防カビ、骨粗鬆症予防などの効果が報告されています(5)。
梅の果肉のポリフェノール含量は8.1~9.5mg-GAE/1g乾燥重量。実が熟していくに従って、果肉中のポリフェノールは減少していきます(6)。一粒あたりに換算すると、およそ22.7~35.7mg-GAE含まれていると考えられます。梅の加工食品に含まれるポリフェノール量は、梅干しでは生果のおおよそ半分(7)、梅酒では19.9 mg-GAE/100ml(8)。(※梅の熟度や加工方法や熟成期間によって変わります。)梅肉エキスにはほとんど含まれていません(9)。
梅のポリフェノールは主に、ネオクロロゲン酸、クロロゲン酸などのヒドロキシ桂皮酸の誘導体で構成されています(6)。その他、梅由来のポリフェノールとしては、リグナン誘導体のリオニレシノール(10)やシリンガレシノール(11)などが同定されています。

ムメフラール (ヒドロキシメチルフルフラールクエン酸エステル)

1999年に梅肉エキスから発見された新規化合物です。梅果実中には含まれない成分で、梅果汁を加熱濃縮する際に、グルコースやフルクトースからヒドロキシメチルフルフラールが生じ、これがさらにクエン酸とエステル化することで生成すると考えられています。そのため生の梅には存在せず、梅肉エキスなど、製造時に加熱濃縮工程のあるものにだけ存在する成分です。
ムメフラールには、血液の流動性の向上作用が報告されています(12)。

アミグダリン

梅の未熟な果肉(青梅)や種子に含まれるシアン配糖体です。青梅の時期に多く含まれているため、生の青梅を極めて大量に食べてしまうと、体内で分解されてできるシアン化水素によって、中毒を起こす恐れがあります(13)。特に青梅の仁(種の中身)に多く含まれるため、警鐘を鳴らす意味でしょうか、「梅食うとも核(さね)食うな、中に天神寝てござる」ということわざが伝わっています。
アミグダリンは、果実の成熟、あるいは塩や砂糖、お酒に漬け込んだり、加熱したりすることでそのほとんどが消失しますので、熟した梅の実や、梅の加工食品を食べる分には、まったく問題はありません。

参考文献
  • 尾崎嘉彦. 地域特産物の生理機能・活用便覧 (株式会社サイエンスフォーラム 東京) . 2004, p. 245-250.
  • 吉田誠, 曽我綾香, 中山由佳, 眞壁優美. 使用塩類の違いが梅干しの品質に与える影響. 神奈川県農業技術センター研究報告. 2010, 153, p. 61-64.
  • 中村アツコ. 梅肉エキスの有機酸,遊離アミノ酸と糖の組成および調整過程における遊離アミノ酸と糖の変化. 日本栄養食糧学会誌. 1995, 48, p. 232-235.
  • Lin, Y.-S; Liu, X.-M; Zhong, W.-X; Wang, S.-Y; Yang, C.-Y; Tang, Q.-S. Chromatographic characterization of organic acids in Prunus mume and its application. Modern Food Science and Technology. 2014, 30, p. 280-285.
  • 公益財団法人わかやま産業振興財団. 果樹・野菜等の機能性成分データベース~和歌山県特産果樹・農産物を中心に~(和歌山地域イノベーション戦略支援プログラム版). B.「果樹・野菜及びその構成成分の機能性物質とその保健機能性データのまとめ」. 2. 梅(梅ポリフェノール). 2015.
  • Mitani, T.; Horinishi, A.; Kishida, K.; Kawabata, T.; Yano, F.; Mimura, H.; Inaba, N.; Yamanishi, H.; Oe, T.; Negoro, K.; Mori, H.; Miyake, Y. Hosoda, A.; Tanaka, Y.; Mori, M.; Ozaki, Y. Phenolics profile of mume, Japanese apricot (Prunus mume Sieb. et Zucc.) fruit. Biosci Biotechnol Biochem. 2013, 77(8), p. 1623-1627.
  • 尾形(斎藤)美貴, 樋口かよ, 小嶋匡人, 長沼孝多, 木村英生, 小松正和. 県産農産物を用いた加工品の品質向上と開発(第2報)-脱塩処理による塩蔵梅の成分変化-. 山梨県産業技術センター研究報告. 2019, 2, p. 11-13.
  • Bong Han Lee; Hee Geun Yoo; Youngsu Baek; O Jun Kwon; Dae Kyun Chung; Dae-Ok Kim. Estimation of Daily per Capita Intake of Total Phenolics, Total Flavonoids, and Antioxidant Capacities from Commercial Products of Japanese Apricot (Prunus mume) in the Korean Diet, Based on the Korea National Health and Nutrition Examination Survey in 2010. Korean Journal of Food Science and Technology. 2014, 46(2), p. 237-244.
  • 三谷隆彦. 梅 梅の機能性成分について. 食生活. 2011, 105 (9), p. 39-45.
  • 白坂憲章, 野村毅, 村上哲男, 吉栖肇. 梅酢中のアリルテトラリン化合物の抗酸化活性および抗変異原性. 日本食品科学工学会誌. 2003, 50, p. 203-206.
  • Miyazawa, M.; Utsunomiya, Y.; Inada, K.; Yamada, T.; Okuno, Y.; Tanaka, H.; Takematsu, M. Inhibition of Helicobacter pylori motility by (+)-Syringaresinol from unripe Japanese apricot. Biological and Pharmaceutical Bulletin. 2006, 29, p. 172-173.
  • 忠田𠮷弘. 梅肉エキスに秘められた血流改善効果. 化学と生物. 2004, 42(4), p. 236-239.
  • 吉川春寿,芦田淳編.第四版総合栄養学辞典.同文書院, 1992, P. 1, 13.